ソフトウェア開発におけるEmployee Experience (EX)

私たちは,ソフトウェア開発に携わる人々のWell-beingを実現,Employee Experience(EX)の向上を目指し研究開発をしています. 実現アプローチのひとつとして,だれでも,いつでも,どこからでも参加できるソフトウェア開発により,多様な人材の活躍の機会を拡大したいと考えています. COVID-19によって推進が後押しされたリモートワークは,働く場所の拡大による働く条件の拡大としても期待されています. 多くの企業ではリモートワークの導入目的として,「勤務者のゆとりと健康的な生活の実現」,「通勤弱者への対応」,「優秀な人材の雇用確保」と,従業員の働きやすい職場の実現に関する項目を挙げています.就業者は,リモートワークのメリットとして,通勤時間・移動の削減や自由に使える時間の増加,育児・子育てと仕事の両立を回答しています.

従来,ソフトウェア開発,特に企業におけるソフトウェア開発では,働く場所が限定されていました. ソフトウェア開発の依頼者および開発者同士のコミュニケーションがとりやすいことが良いソフトウェア開発につながるからという面と,企業にとって,働く場所を固定した方が情報および人員の管理をしやすいという面があります.

先人としてのOSS

OSSは,利用者の目的を問わずソースコードを使用,再利用,再配布が可能なソフトウェアの総称です.同時に,頻繁なリリースなどの開発スタイルや,インターネットによって緩やかに結びついたコントリビュータたちによる協働など,開発への関わり方の先進性においても注目を集めてきました.多くの価値のあるソフトウェアが,世界各地の開発者の協力により生み出されているのです. これらの開発から,Big techも学ぶべきものがあると我々は注目しています. OSSコミュニティが成長するにつれて,ソフトウェア開発の依頼者やマネジメント層も,OSSコミュニティのあり方やプロダクトマネジメントに関する関心を持つようになってきました.

OSSコミュニティはユートピアか?

私たちは,OSSのコミュニティのあり方,あるいは開発者のプロジェクトへの関わり方についてのさまざまな意見を耳にします. ソフトウェア開発の依頼者やマネジメント層がもつ意見は,OSSコミュニティの成り立ちやなどからくる印象論によるものが多いことに注意する必要があるでしょう. 実践者たちは,自身の経験則から学びを得ますが,それ以外の人々は経験則を伝聞し,時に先入観をもって解釈します.結果,過度な期待を持つことで失望したり,強すぎる懸念を持つことの要因になります. 例えば,「アジャイル」という言葉は,その言葉を自身の活動の中から汲み出した開発者と手段として注目するマネジメント層では捉え方が異なります.

そこで,NTTと九州大学のチームは共同でOSSに関してとりざたされるTopicsを6つ取り上げ,データに基づく事実とフィクション(神話)を区別する試みを行います このEBookではこれらの神話に対する事実を明らかにします.

OSS Myths and Facts (2024年4月16日更新)